「世界」というレイヤー
「存在する場所」という意味合いではなくて、「日本」と対置される意味合いでの、「世界」。
本日は会社の研修で、「日本をビジネスモデル輸出国家に」というテーマの講演を聴きました。
結論から言えば、ものすごく面白かった。
それは多分に私自身の関心の対象の集積であったから、という意味合いではあるけれど、事業の話、はやっぱりわくわくするもので。
日本の経済成長が、10%台で推移していた頃から、オイルショックを契機として
成長率ががくんと下がり続けていた頃。
生産年齢人口の減少とデフレ停滞が続き、一人当たりGDPが下がり続けた頃。
それにも関わらず、所得が増えていた日本。何故そんなことが起きているのか。
それは、「所得」として認識カウントされていない、「各人の工夫」による
収益がダブル、トリプルで立っているからではないか。
そんなお話から始まった「起業」についてのお話。
日本の開業率は現在4.5%程度で推移しているそうで、これを10%まで引き上げたい、
というのが講演者の想い。
高齢化と人口減少で、人口オーナスが続く将来の日本において、
労働集約型の産業で世界と伍していくには、体力も戦力も足りない。
そうであれば、経験知を稼ぐ糧に変えていくしか、乗り切る途がないだろう。
物流コストを考えれば、消費地により近い場所で財の生産がおこなわれるはずで、
そうであれば消費市場としてシュリンクしていく日本においては、
将来的な貿易赤字は避けえないと見込まれる。
であるとするならば、所得黒字―知財戦略・ライセンスフィーなど、「しくみ」をつくることによって稼ぐお金―で、GDPを底支えしていくほかあるまい。
液晶テレビや電池、太陽パネルなどが市場に「登場」した頃から現在までの
日本企業が取れていた市場シェアの推移をグラフ化してみると、
登場時はほぼ100%近いシェアを獲れていたにも関わらず、
これらの分野はのきなみシェアを喪失していく。
「技術」で勝てるから市場に出ていける一方で、
「経営」で負けるから市場から締め出されていく。
「特許庁」が保護する対象とするのが「パテント」―つまり知財のハード面―に偏りすぎた結果、文化・伝統・地域など「ソフト面」での武器をのきなみ護れないまま、になってしまっているそうだ。「グローバルブランド」として日本がトップに食い込めている分野は僅か2分野。「自動車」と「家電」。ここに行政支援が偏りすぎた結果、日本の「市場」の中でバラバラに動いているうちに、「産業」として「世界」に対抗できず、より大きな市場の中で食いつぶされていく産業がいかに多いか。
「異質」を束ねていく力だけでなく、同じ様な企業でも団結することが難しいのだろうな、というのを如実に表している様な話だった。
「業界再編」は、地銀や学校法人をはじめ統合方向への圧力が効いていくのだろうけれど、単に組織をくっつけました、で一緒に走れるかと言えば、全然そんなことはなくて。
入社以来ずっと組織再編案件に携わってきて、身近でお客さんの現場に触れていて、やっぱり「別々のものがひとつになる」ことが、すぐさま融和し団結に繋がるかといえば、全然、そんなことはなくて。個社単体であってすら、部門同士のセクショナリズムでがちがちの縦割りになる様なものなのだ、まして別の組織をや。
社会企業家や、最近の起業者に見られる特徴、にも話が及んだ。
①グローバルな実体験をもち、②技術+顧客視点があり、③高学歴で④成長市場に参入して行く、というものだ。
「とにかく最後は人材だ」「ある分野できちんと人が育つには、10年は同じところにいなければ難しい」。「世界標準は最低でもMBA」。「資格は重要」。など、キャリア形成についてや、ベンチャー企業はいかに大手とアライアンスを組むかが成否をわける、という様な経営上の方針・戦略についても触れられた。
スパイバーなど大学発ベンチャーの話はやっぱり面白かったし、
PhDr.がきちんとマーケット視点を以て市場に繋がっていける様になることが、
技術で勝負しながらビジネスでも勝てる国家になっていく上で大切、
という話は聴きながら何人かの顔が浮かんだ。
とにもかくにも、個人的にフックされるテーマがかなり散りばめられていて。
①生産者たれ
②地方創生
③身近な課題意識を事業に
④プラットフォーム
⑤構造化
⑥勝てる「しくみ」をつくること
⑦俯瞰してみる
⑧「しくみ」を作る人を支援する
読書会とか、ブリッジとか、個人的にやりたいこととか、政策検討部会とか、
ここ最近の関心の対象がみごとに繋がっていく感覚があって。
あまりにもフックされたのでかなり思考が発散してしまったのだけれど、
ちゃんと時間をとって結晶化しておきたいテーマでした。
何で括ったらいいのかな。
「知」を用いて「稼ぐしくみ」をつくるコト。
うん、「しくみづくり」が、関心の対象としてしっくりきそうです。